「Myunsic Re/cordsが選ぶ、2018年の年間ベスト・アルバムTOP25」第13位!
テキサス出身 Kevin Abstract を中心に結成のヒップホップ・コレクティヴ、Brockhampton。活動をLAに移しての、紆余曲折を経て、満を持してのメジャー・デビュー作。(待ってましたよ・泣。)
Brockhampton とは
Kanye West のファン・フォーラムである「KanyeToThe」の掲示板で知り合ったメンバーを中心に2015年に結成。
ラッパー、シンガー、DJ がいるのはもちろん、エンジニア、デザイナー、写真家、ツアーマネージャーなど、多様な才能が集まった10数人がメンバー。
サウンド、ミュージック・ビデオの制作から、アパレル、広告、ドキュメンタリー番組制作などなど、全方位の制作活動を自前で行うクリエイティブ集団で、メンバーの人種も多様。
Kevin 自身はゲイであることを公表してるし、あらゆる差別に対してNoを表明していますね。(素晴らしい!)
本人らとしては、インターネット発「One Direction以来最高のアメリカン・ボーイ・バンド」だそうで(笑)。
(英語の「Boy Band」は、日本での「バンド」のイメージとは違ってて、本人らも言ってる、ワンD(One Direction)とか、懐かしいところで言うと、バックス(Backstreet Boys)とか、Justin Timberlake がいた*NSYNCとか、、日本でだと「男性アイドル・グループ」のことを指す言葉であることに注意ね。笑うとこなんす・笑。)
Brockhampton のサウンド
90年代の「ニュー・スクール」の雰囲気も思い出させる、サンプリング主体の音ながら、足回り(キック、ベース)は「ベース・ミュージック以降」のものでもあり、その上で多数のラッパーがマイクを回したり、、楽器ができる人もいるので、ピアノやギターを中心にした歌モノもあり、、の賑やかな内容で、トラップやマンブル・ラップ全盛の昨今にあって珍しい志向性。
De La Soul、A Tribe Called Quest、Jungle Brothers で育った私なんかにはドンピシャの空気っすよ!
2017年にアルバム「SATURATION」のシリーズを3枚もリリースしてるんですが、どれも充実の内容で非常に良くて。
メジャーの RCA Records へ移っての1枚目は非常に期待してました。(契約金、16億円とか言われて騒がれてましたねー。)
そういった中、メジャー契約発表の翌月の2018年5月、メンバーのラッパー Ameer Vann による、未成年との性行為や女性への性的虐待への疑惑が報じられグループから追放。
この事件の影響は大きく、USツアーも途中で中止に。
ピースな心情を表明している人たちでもあり、ダメージは(色々な意味で)大きかったようです。
メジャーで制作中のアルバムも、最初「Team Effort」と言っていたところから「Puppy」へ変更発表。そこからさらに「The Best Years of Our Lives」へ変更、、と、制作の上でも混乱が発生しました。
アルバム、ちゃんと出るのか心配になりましたよ、、。
連続の新曲リリース3曲
で、7月に入って、怒涛の新曲3曲の連続リリースがありまして。これが、全部良くて(泣)。
出た順に聴いてみましょう。
3曲、全部、味が違うし、内容もいい。Ameer いなくても大丈夫だ!
と、確信を持ったところ、「The Best Years of Our Lives」はやめて(!)、アルバムは「Iridescence」(=「玉虫色」)に、またもや変更。
さらに、The Beatles でおなじみ(笑)ロンドンのアビーロード・スタジオで録る、っつー話に!!
しかも、Kevin の曰く「iridescenceの最大のインスピレーションは The Beatles のサージェント・ペパーズから」とか言うんですよ!
「サージェント」影響下の「玉虫色」のHIP HOP!!
俺的に一番ヤバいコンセプトじゃないっすか!!(笑)
まあ、期待しますわねー!!
「Iridescence」リリース!
で、実際に9月に「iridescence」出ました!!
、、「1999 WILDFIRE」「1998 TRUMAN」「1997 DIANA」ひとっつも、入ってねーの(泣)。なんなのー(泣)。
サウンドの方向性も「SATURATION」のシリーズとは、全く違うものになっておりました。
上物に、これまでの彼らの特徴であった、有機的な「サンプル使い」をほとんど持ち込まず、グライムっぽかったり、もろドラムンベースもあり、、の、重ーいベースとリズムの骨組み主体のサウンドで、結構ダークな印象のトラックが続きます。
(トラップの先祖って、やっぱ D’n’Bだなー、とか分かりやすく感じられて、面白かったり。)
ギターの雰囲気に The Beatles の「White Album」感を感じないではない(笑)④「Something About Him」や、美しいストリングス+歌からドラムンベースに入っていく⑥「Weight」あたりは、ピースなムードで作品中でも好きなんだけど、残念ながら公式でMVを切ってなくて、ここではご紹介できず、、。
ほとんどのトラックがダークで不穏なムードなんですよね。まあ、ベース・ミュージックらしいっちゃー、そうなんだけど。
ピアノ主体で美しく始まる⑭「Tonya」にしても、後半に若干不穏なムードになる感じだったり。
もっとピースフルだったり、パーティーー!だったりするかのと思いきや、そういった要素は薄かったですね。みんなでシンガロン!(笑)的なものも、もっとあるかと思ってたんですけどねー。思ってたのとは違いましたね。
製作者の言とは違って、音の聴いた目は「サージェント影響下の玉虫色」にゃー感じねーな、と(笑)。
ただですね、、そういう、こちらの期待は、わきに置いておいて(まあ、「サージェントの影響受けてて、玉虫色だからよろしく!」って Kevin が言ってたから持った期待ではあるんだけど・笑)、これはこれで聴くと、全然、いいんすよね。
多人数のマイク回しによるデリバリーの多様さで飽きが来ないし、D’n’B の数曲も懐かしくも新しい音になってるし。← D’n’B 大好きだったんよねー。(こんな「売れてる」界隈で、今 D’n’B やってる人、誰もいないっしょ・笑。)
今回は、件のアビーロードで10日間という超短期間で制作した、ということなんで、上物部分が抜けて、ベースとリズムという骨組み主体の、割と「ヌード」で「ネイキッド」なサウンドになったんでしょうかね。
「Iridescence」まとめ
直前の3曲やこれまでのアルバムがあっての、今回のアルバムがあって、全体としてサウンド的に多様ですから、次のアルバムはまた、これとは違った音になるんじゃないかなーと思います。
作品ラインナップを通して「玉虫色」だと言えば、まあそうなんで、そういうものとして受け取っておきます。(←好意的曲解・笑。次作、「Iridescence II」って言うかもしれないけど・笑。)
セールス的にはどうなるかと思ってましたが、ビルボードでも堂々の1位を獲得。
ただ、CDのリリースは無しですよ。
楽曲のデータ・コード付きのTシャツと、アナログのみ。時代です。
(服飾専門の人もメンバーにいますからねー。強みを活かしての売り方。上手っすねー。)
過去作より好きか?と言われれば、今回のは食い足りない気持ちもありますし、分かりやすい「キラーチューン」が無いなーとも思いますが(アルバム未収録の3曲、特に前半2つ、超キラーだったやんかー・泣)、これはこれで全然好きな音なんで、まあ、この順位ということで。