「Myunsic Re/cordsが選ぶ、2018年の年間ベスト・アルバムTOP25」第3位!
ロンドンの「インターナショナル・タノシイ・サウンド」グループ、Kero Kero Bonito、2枚目のアルバムは、1作目から大きく方向展開したオルタナティヴなバンド・サウンドに!
アジア・ルーツのアーティストが台頭した2018年
2018年は、欧米の音楽シーンにおいてアジア系のアーティストが躍進を見せた年だったと言えるでしょう。Japanese Breakfast の Michelle Zauner は韓国系だし、Jay Som の Melina Cuterte がフィリピン系だったり。(サウンドの毛色は違うけど、6位の Anderson .Paak も韓国系ですし。)
日系の Mitski は、世界の音楽批評サイトの年間ベストの順位を集計したサイト、AOTY(Album of The Year)で2位を獲得!と、アジア系アーティストの活躍の筆頭とも言える大ブレイクを果たした訳ですが、、我が Myunsic Re/cords では、その Mitski を23位に差し置いて、第3位をイギリスはロンドンの Kero Kero Bonito が獲得でございます(笑)。
ヴォーカルの Sarah Midori Perry は、イギリスと日本のご両親を持つ方で生まれは名古屋。みどりさん、ですね。
そして、6歳から13歳まで北海道は小樽で暮らしていた、、ということで、私と同郷なんですよね。
レペゼン・オタル!!(笑)
だから3位!、、ということでは、もちろんなく(笑)、この人たちの音楽は、そういったこととは一切関係なく、2014年の Mix Tape 「Intro Bonito」から聴いてまして、みっちりファンでした。
Kero Kero Bonito とは
彼女らを知ったのも、海外のサイトでカタカナが書いてあるジャケットが目に入って、勘違い日本語かと思って気になったのがきっかけ。完全にジャケ買い(笑)。
そして、聴いてみたら非常に好み!だったという、幸せな出会いで。
英語と日本語のバイリンガル・ラップ、Kawaii 文化の影響など、分かりやすいところが目立つのは、まあ、もちろんのことなんだけど、それに加えて、この音作りのバランスは、あまり他に類を見ないものだと思う。
パッと聴きは、ただただ分かりやすくポップス。でも、ビートはしっかり効いているし、この曲だとキーボードのソロがロッキンだったりもする。(Sarah のお父さんが、ツェッペリンとか T Rex とか聴いていた、、という(笑)。)
スーパーファミコンや Nintendo 64 時代のゲームの音をサンプリングしてたりするんだけど、プロダクションの落とし所が、どこか昔懐かしい「インディ感」を感じさせるところにも、グっとやられもする。音に隙があるのが、むしろ良い、というか。90年代のローファイの感覚を思わせる。
基本的に、明るくてポジティヴィティに溢れるサウンドと歌詞。
本人らの「標語」にもある通り「インターナショナル」で「楽し」く、遊び心があって、かつ多様性を大事にするマインド。(そのサークルには、動物、犬猫も多分に含まれていることが表明もされる(笑)。)
どの側面を取っても、私の好みど真ん中で、デビュー作の「Intro Bonito」は当時、本当に聴きまくったし、周りにも勧めまくってました(笑)。
デビュー・アルバム「Bonito Generation」!
その後、2016年にEMIより、メジャー・デビュー作「Bonito Generation」を発表。
「Intro Bonito」でのサウンドを洗練させた「正統進化」と言うべき内容。
メジャーでMVも洗練されました(笑)。
12位の Sophie と Kero Keroの彼らは美大で同級生だった訳だけど、、ストレンジで実験的なポップネスを持った人たちが、メジャーでビッグなプロダクション(笑)ができるようになった時に、やりたいことはよくよく分かるし、自分たちのやってきたことを拡張できて、そのことは全然良いことのはずだけど、、結果的にできた作品が「普通」に聴こえてしまう、、という感じ、、似たような流れのように思います。(これ、聴いてるだけのやつが言うのは簡単だけど、クリエイターとしては、すごく難しい問題だろうとも思います、もちろん。)
とは言いつつも、この作品も「Music 2000」という 初代 Playstationで動く音楽制作ソフトで作ってたりもしてまして、その見た目の普通さの裏には、けっこうな実験精神もあり、そのアティテュード(笑)は変わらず支持でしたけどね。
ここまでの音楽性は、90年代だったら「モンド / ラウンジ」とカテゴライズされていたかも、というものですね。「HCFDM(=Happy Charm Fool Dance Music)」と言ってもいいかもしれません。
(HCFDMの方は、まあ当然としても(笑)、モンド / ラウンジという言い方も、すっかり聞かなくなってしまいましたね。)
驚くべき「変貌」
で、そこから2年。
2018年の2月に、久々となるEP「TOTEP」を発表した訳ですが、、ジャケにまず驚いた訳ですよ。
で、サウンドもこれまでの打ち込み主体のエレクトロニカ・ポップ路線から激変。
完全にフィジカルなバンド・サウンドに移行していました。
90年代のオルタナ、シューゲイズ感まで感じる内容になってまして。音自体も相当ローファイになり。さらにトレードマークだった「日本語」も完全に封印、という徹底ぶりで。
このEP、4曲で11分しかない、、っていう点も良かったですね。
コンパクトでも、非常に破壊的なインパクトがあった。
たった11分でも、「同じことはやらない」というスタンスを知らしめるには十分な力があって。
「Time ‘n’ Place」リリース!
それを受けて、10月に、2年ぶりとなるセカンド・アルバムが出た訳です。
②から繋がっての③「Only Acting」。
「Time ‘n’ Place」まとめ
この変化、完全に「賛」ですね。
全体的に、90年代のオルタナ感を引いてきており、私としては世代的にぴったりすぎて、ただただ合います(笑)。
、、と言う個人的な趣味の点は置いておいたとしても、、上にも書いた通りで、メジャー・デビュー作で、これまでの路線を「やり尽くした」感が出てたんですよね。もし、このまま同じことを続けちゃうと「飽きちゃう」かなあ、と。
そこを完全に回避してきていて。まずはその姿勢を支持です。
言うても、アルバム2作目で完全な方向転換ですからね。相当、早い。
制作の手法自体が全く違っているわけで、様々、試行錯誤してのことだったでしょう。
デビューまでに作ってきたグループとしてのイメージ、強みを捨てている訳だから、相当勇気の必要な選択だったと思います。(「変わってしまった」ことで「これでは無い」と、離れてしまったファンもいたようですし。)
ファーストの完成の後、メンバーそれぞれの大切な人を失う出来事があったとのことで、これまでの「陽気なやり方」以外のことが必要になった、、。そこで、直接的なフィジカリティ(身体性、物質的であること)」、つまり、直でかき鳴らせる、叩ける「楽器」が必要であった、という流れだったとのこと。
ファーストに比べて哀愁が増しているのは、制作の経緯からも推して知るところですが、それでもポジティヴさは引き続き、なところに好感を持ちます。
最初のMix Tape の時から、明るいイメージが手前には来るのはもちろんとは言え、ただバカ明るいのではなく、その裏側にはメランコリックな部分や、ある種の内面性を探求しようとする内省的な要素なんかも入っていて、そこもまた大好きだったのですが、、悲しい出来事もある中で、音の作りから変革を入れつつ、、より感情的な表現の振り幅が増した作品を出せたこと、本当に良いなあと思います。
人生色々ありますから。
つらいこと、厳しいこともある上で、それでも、明るく、ポジティブであること。あろうとすること。
大事(泣)。
*第4位はこちら!